華はあるか~私見日本シリーズ・中日-ダイエー~


「行き先はボールに聞いてくれい」第2球

 おいおい、この盛りあがんない日本シリーズ、一体どーすんだよ。
 あたしは確かに巨人ファンだが、野球というスポーツ自体好きだし、実際、去年の横浜対西武も、かなり夢中になって見た。ま、あたしくらい人間の器がでかいと、ひいきの球団がどーのこーのなんて、料簡の狭いことは言わないんであるが(なはは)、それにしても今年はちょっとつれえなぁ。
 
 華が無い、というのは、プロフェッショナルの世界において、残酷なことである。
 ダイエー工藤は、もはや球界屈指の左腕と言っても過言ではなく、第一戦では、今年から使い始めた高速スライダーを武器に、シリーズ新記録の13奪三振。2戦目では力が出せなかったものの、今期絶好調の若田部もいるし、中継ぎのニューフェイス篠原、押さえのペトラザと充実した投手陣。打線には、ホームランキングに輝いたこともある小久保をはじめ、ベテラン秋山、イキのいい、ついでに顔もかわいい城島、井口、駿足村松もいる。
 中日にしても、知将山田久志ピッチングコーチのもと、左の野口、山本昌、右の川上、ダイエーから移籍してきた、去年の最多勝男武田と、巨人ファンから見れば、歯ぎしりを越えて、よだれの出そうな先発陣に加え、ある意味では先発陣より強力だった、岩瀬、落合、サムソン・リーという中継ぎ陣、そして押さえのアンパンマン・ソンドンヨルという鉄壁のピッチングスッタフを揃え、打線でも、阪神にいるときは寝ていたとしか思えない関川、社会人でフツーの人になっちまったかと思いきや、どっこい大活躍のルーキー福留、横浜ローズには負けるが安定した4番ゴメス、とこちらも充実。
 どちらも、両リーグのペナントを制するだけの実力と裏付けを兼ね備えた、素晴らしいチームである。が、しかし。
 スポーツは純粋なエンターテイメントではなく、各選手がそれぞれの能力を競い合うという、個人的な側面を持っているが、プロスポーツに関して言えば、やはり客商売であるということも確かである。観客は、それぞれの競技を高いレベルで戦うアスリートたちに熱狂するが、更にそれを越えて、われわれ凡人には手の届きようのない輝きを、彼らを通して感じたくて、スタジアムに足を運ぶ。
 よく、記録に残る選手、記憶に残る選手という言い方をするが、そういうものを誰よりも明確に体現しているのは、もちろん長嶋茂男であるし、サッカーで言えばカズ、ラグビー日本代表監督の平尾、神戸製鋼の大畑、ボクシングの辰吉もそうだったし、モハマド“ザ・グレイテスト”アリを忘れられる人はいないだろう。また、今年見事復活した男子テニスのアガシ、女子テニスのヒンギス、ヒンギスをウィンブルドンで破った新星ドキッチ、そして今季惜しまれつつ引退したグラフも、そのすさまじい勝率以上に、忘れえぬアスリートのひとりである。まあ多分に個人的ではあるが、彼らはそれぞれの競技に対して高いレベルの実力を誇ると共に、それとは全く別の所で、何か言葉では言い表せない、ある種の鮮烈さ、を持っているように私は思う。広岡、森ではい、城、柳沢では足りない、あんなに強いのにダウェンポートでもない、その理由を、ひどく乱暴に言えば、華がない、ということになる。
 日本シリーズの話に戻ろう。
 思えば去年のシリーズは、西武東尾、横浜権藤という、どうしようもなく見る側のモティベーションをかき立ててしまう、男同士の戦いだった。そして第一戦、横浜の先頭バッター石井琢郎のいきなりのセーフティバント成功で観客は、野球というスポーツの輝きに、早くも触れてしまうこととなる。
 残念ながら今年の日本シリーズ、2戦目が終った現在、私は中日、ダイエーどちらのチームにも華のある選手を見出すことが出来ていないし、輝きを放つプレイにも出会えていない。ま、それは私の想像力の問題かもしれないし、何だかんだ言っても結局好きだから、次の試合も見ちゃうんだけどね。             

last up to date 1999.11.13