天に積むもの


わかったぞ、最終日ぐうの音も出ないくらいいい天気にして、
ああなんか今年一年いい年だったなあって思わせちゃおうって魂胆だな、
ふん、だまされるもんか、などと思いつつ、
だけどだまされちゃおうかなと思ってしまいそうになるくらいよく晴れた、
2016年おおつごもり。

名伯楽と呼ばれたボクシングトレーナーのエディ・タウンゼントは、
海老原博幸、井岡弘樹など6人もの世界チャンピオンを育てたにも関わらず、
その名声に反してお金にはさっぱり縁がなく(笑)ごくつつましく一生を終えた。

エディが亡くなった時、
縁の深かった金子ジムの会長でクリスチャンだった金子繁治氏は、
「エディさんは、天に財宝(たから)を積んだ人です」
と言ったという。
地上に積んだ財宝は盗人に盗まれ、虫に食い破られるが、
天に積んだ財宝だけは永遠である、
という新約聖書マタイ伝の一節だそうだ。

何をやっても手の中がからっぽに思えたり、
報われなくて、ただへとへとで、全部バカみたいに思えたり、
そういう時たまに、このエピソードを思い出す。
そして、いや、まあ、財宝じゃないし、
どっちみち天に積むほどのもんじゃないし、と、
照れくさくなって、ぷぷっと笑っちゃったりする。

でも、

管理人さんもいなくていいし、屋根付きじゃなくていいし、
青空駐車場とか、空き地でいいから、雨ざらしでいいから、
誰かを思って甲斐無く走ったことや、
詮無いと知りながら自分のために明日の歌を選んだことが、
あの空のどこかに積まれていますように、
それは私にとってやっぱり、たから、だから、

と、

願いたくなるような2016年最終日の空だった。

シン・ゴジラも君の名はも逃げ恥も真田丸も、見事オールスルーしたけど(笑)、
今年一年の喜びに、悲しみに、
心からの感謝を込めて。
何より、私とともにあってくれたあなたの心に、渾身のありがとうを。
また来年、会いましょう!