名場面


本棚の整理をしてたら奥からぽろっと出てきて、
ああなつかしい、と思ってぱらっとめくったら一気に読んでしまった。

いまでも、好きな映画は?って聞かれたら絶対「蒲田行進曲」が入る。
松坂慶子さんの小夏が、泣いてばっかなんだけど、
それはもうきれいできれいで、
コーコーセーだった私はうっとりしながらせつなくて一緒に泣いてた。
映画を見て大感激して本屋に走ったから、このカバーなのだな。
(つかこうへいさんの本のカバーは基本和田誠さんのイラストだから)

「女はね、いつも一緒にいてくれる人じゃなきゃダメなの。
銀ちゃん、一緒に、いてくれないじゃない」
自分から捨てたくせに、戻ってきて、やっぱりオレと一緒になろう、
とプロポーズする銀ちゃんに、
小夏が泣きながら振りしぼるように言うシーンが好き。
ややこしくて、ねじくれて、でもどうしようもなく愛のシーン。

向田邦子さんの「あ・うん」ラスト近く。
突然出征が決まって挨拶に来た恋人。
立ち尽くす親友の娘さと子に、
早く追いかけなさい、今夜は帰らなくていい、
と門倉が声をかけるシーンも好き。

中島らもさん「今夜、すべてのバーで」。
容体が急変して亡くなった少年を悼んで、
らもさんと思しき主人公と主治医がエチルを酌み交わすシーン。
「せめて恋人を抱いて、もうこのまま死んでもかまわないっていうような夜があって。死ぬならそれからでいいじゃないか」
大好き。もう、大好き。

そんなわけで本棚の整理は一向に進まず。

しかし、泣いたり死んだり、どうしようもない感じが好きなんだな、やっぱ(笑)
つかさんも、向田さんも、らもさんも、もういないけど、
ツアーとアルバムの準備でピリピリの心に、
言葉が沁みるな。秋だな。