HPのコンタクトフォーム経由で、
何の前触れもなく代官山UNITからメールが届いたのは、6月の初めのこと。
時々そのかたちで、見知らぬライブハウスからお声がけいただくことはあるのだけど、
あの「代官山UNIT」が私に何の用!? と、しばし混乱した。
私にとってUNITは、SIONの年末恒例アコースティックライブの会場であり、
人波の隙間からこぼれてくる「12月」を聴きながら涙した記憶とともに、
ぶっきらぼうだけどシックなたたずまいにずっと憧れ続け、
いつかあそこで歌ってみたい、でも届かないなあと見上げるライブハウスだったから。
恐る恐る開いたステージ制作マネージャーという方からのメールには、
丁重な出演依頼に加え、
初めて見たコンサートがいとおしいグレイツアーの東京公演だったこと、
ANNのリスナーでもあり、最終回の時は大学生で、有楽町に駆けつけたこと、
それらがきっかけで音楽に関わる仕事に就くことになり、
自分が働くライブハウスでいつか私に歌ってほしいとずっと思い続けてきたこと、などが、
控えめに、でも熱を湛えて綴られていた。
文字通り、驚愕。アゴが、カーンって落ちる感じ。
その時ちょうど、6月末の星と灯台隠岐諸島ツアーの準備を始めてたところで、
この旅も、海士町なかむらりょかんの中村さんの熱意から始まっていたので、
長くやってるといろんなことがあるとは言え、
こんなこと、ふたつも続くってありか、と、ちょっと呆然としながら、
でも、あたたかいもので胸の中がいっぱいになった。
手紙を瓶に詰めて、グッドラックと祈りながら海に放つように歌ってきて、
そんなもん拾う物好きいないだろ、届くわけないだろ、
と、ぺちゃんこ方面に気持ちが振れてしまう日も、時にはある。
去年の春から今年の春までは、25周年、という冠に守られて走り切ったけど、
祭りは終わって、宴も終わって、
意味や価値を考え始めれば夜は長くて、
節目のあとはいつもそう、さて、ここからまたどうしたもんかな、と、
多少途方に暮れていた時期でもあったから、
歌っていうものが、私が思っているよりはるかに自由で、タフで、
好き勝手にどっか飛んでった先で、
長い時を経て大事にあたためられ、芽を吹き、花を咲かせ、
そして、誰かの夢になっていたということが、染み込むようにうれしかった。
翻って考えてみれば、つい忘れそうになるけれど、
口には出さずとも黙って足を運び続けてくれる人たちの胸に、
いつだって花は咲いているはずで、
そんな当たり前のことをあらためて噛み締めたりもした。
テラスの植え込み。
完全放置なのに、夏の暑さにも雪にも台風にもびくともせず、
不安になるくらい葉を茂らせて、
きっちり2年で不安になるくらい枯れ果てて、
でも去り際に落とす種から驚くほどたくさんの新しい芽が出る。
ウチのイタリアンパセリ。偉大なる雑草。
終わりの影を始まりが踏み、始まりの影を終わりが踏み。
続いて行くものはいつだってそんなふうに、でこぼこだらけの線を描く。
そのようにして動き始めた2019年秋への道。
ただやるんじゃつまらないぜ! というわけで、
前からやりたいと思っていたセンターステージ、
360度客席の格闘技スタイルにチャレンジしようと決めた。
ただし、第一のハードル。これは内側の話になるけれど、
UNITクラスの会場で週末の佳き日を押さえようと思ったら、
1年前でもアヤシイというのが定説。
話を始めたのが6月。
秋のワンマンやれたらいいなとは思ったものの、
普通スケジュールないだろ、と半分あきらめていたら、
7月の半ば過ぎにまさかの吉報。
「11月9日、空きました!!!」
節目も祭りも終わったから潔くタイトルは無し、というのと、
優勝カップもベルトもないけど、心はチャンピオン、ガチの勝負、という気持ちを込めて、
「ノンタイトル」というタイトルを付けた。
9/8の星と灯台札幌まで決まっていたので、
よし、ちょうどいい、札幌終わったら10月はお休みでUNIT準備全力投球で、
ばっちりじゃーん、と思っていたのだけど、
結果的にラグビーワールドカップに全力投球してしまったことは、
皆さんご存知の通り。
あれほど正気を失うなんて、開幕前には思ってもみなかったことで。
でも私にとっては、ここしかない、奇跡みたいな魔法みたいなタイミングだったなあって、いま思い出してもちょっと震える。
毎日感動して感激して泣いて、心が動いてどうしようもなくて、
それはもうそれ自体がライブに向かってのレッスンだった。
日本代表の堂々たる勝利と敗北を筆頭に、
勝ちでも負けでもなく、ただ、勇敢であることを確かめ、刻み込んだ日々。
スタジアムから人々が立ち去り、私の本番は一週間後。
最後かつてない勢いで尻が燃えたけど(今回自分のテーマは、新しい歌、だったので)、
胸がいっぱいで、あふれそうで、
そんな心のままステージに立てることに、ただ感謝しかなかった。
まさに、一生に一度だったなあって思う。
恋文のようなオファー。
スケジュールを”ジャッカル”してくれた情熱。
代官山UNIT宇佐見真一さんに感謝します。
お互いの長い夢に、カンパイ。
普段は前だけに送る音を四方へ届けてくれたPA大野さん、
さりげなく赤コーナーと青コーナーを配し、
戦う歌を支えてくれた照明野島さんにも感謝を。
セットリストが決まったのが本番二日前、というのは、私にしては上出来なんですが、
準備大変だったかと(しかも当日変更あったし)。
そしてもうひとつのハードル。
スタンディングしかやらないので椅子がないUNIT。
ふと相談してみたら、思いがけないところから救いの手。
あの夜皆さんに座っていただいたのは、
SHIBUYA O-WESTのパイプ椅子でした。
道玄坂と代官山をつないだ愛情に感謝します。
ワンチームで戦ったノンタイトル戦を見守り、見届けてくれた皆さん、ありがとう。
でもさ、おれたち、もうずっと前から、
篠原美也子っていうワンチームだったよね、
なんちって。
あれから2週間。
セットリストとか、早く報告しなきゃ、
と毎日焦りながら、PCに向かう気になれず、
ブログ書くのを一日延ばしにしてたのは、
振り返って言葉にしたらほんとうに終わっちゃう、
と思ってたからかもしれない。
ワンマンのあとはいつもそうだけど、
ライブはボディブロウで、じわじわ効いてくるから、
すいません、私もうちょっとここにいて、めそめそしてたいので、
時間も日付も先に行ってください、みたいな気持ちになる。
でも、もう行かなきゃ。
終わりの影をいつまでも始まりが踏めなくて、困ってるじゃないか。
そんなわけで、お礼が遅くなりました。
SOLD OUTの満員御礼で見届けてくださった皆さん、
あらためてほんとうにありがとうございました。
当日券含め今回もやっぱり立ち見がたくさんになってしまってごめんなさい。
背中を見守ってくれた友だちも、ありがとう。
あなたの場所からは、何が見えただろう。
どんな歌が届いただろう。
私はまだ、皆さんの夢でいられているだろうか。
テンカウントのゴングは、聴こえるようでもあり、
一旦止まったようでもあり。
いずれにしても、戦うより他なし、と言いながら、
この先の予定がすべて未定というあたりがさすがあたし、なんですけどね。
また時が来たら歌います。
身の丈は、ぶち破るためにある。
ラグビーとボクシングが先生です。
ワンマンライブ「ノンタイトル」
11.9(土)代官山UNIT
01.テンカウント(未発表)
02.Stand and Fight ’06「レイディアント」’08「your song」’13「青をひとつ、胸に抱いて」
03.目を閉じたくはない ’04「種と果実」
04.カーラジオ ’17「Lighthouse keeper」
05.ダイヤモンドダスト ’03「夏ノ花」
06.風の背中 ’97「Vivien」’03「SPIRAL」
07.きれい ’13「青をひとつ、胸に抱いて」
08.ひとひらの月(未発表)
09.limit ’06「レイディアント」
10.願わくば ’06「レイディアント」’08「your song」
11.ボクサー(未発表)
12.イノセンス ’11「花の名前」
13.夜間飛行 ’02「bird’s-eye view」’08「your song」
14.ひとり ’93「海になりたい青」’03「SPIRAL」’08「your song」
15.LIKE 17 ’98「magolia」’03「SPIRAL」
E.C
01.遥かなる ’17「Lighthouse keeper」
02.向日葵 ’17「Lighthouse keeper」
03.ロックンロール(未発表)
E.C 2
01.満月 ’93「満たされた月」’13「青をひとつ、胸に抱いて」
P.S 今回のお土産袋は、押し売り的ポストカード。
私がいちばんうれしいってことはナイショ。