心の値段


110327

保育園友だちで家族ぐるみの仲良しOさんち。
ダンナさんの故郷は釜石で、ご両親が被災。
高台の仕事場にいたお母さんはすぐに無事が確認されたけど、
お父さんの安否が、なかなかわからなかった。
駆けつけたくても、道路も鉄道もアウト。
ダンナさんはずっと、
ツイッターやインターネットを使ってお父さんを探していたけど、
情報は少なく、しかも錯綜して、
さぞかし歯がゆいことだったろうと思う。
地震から10日近く経ってようやく現地入り出来ることになった時、
津波に流されてしまったお父さんの遺体が、
自衛隊によって発見されたと報せが届いた。
ダンナさんは最後まで、
取り乱すことなく、ひとことも不満を言わず、批判もしなかった。
ただ、遺体が見つかったことに感謝し、
情報を寄せてくれた人たちに感謝していた。

同じく保育園友だちの仲良しTさんち。
ダンナさんは防衛省勤務、
奥さんは現在内勤だけど自衛隊員というおうち。
国防、というイメージからは程遠いほっこりしたご夫婦。
大変だね!と奥さんにメールしたら、
いつもどおりのほっこりした様子で、
自衛隊頑張ってますよ〜まだ出動命令ないけど私も準備してますよ〜、
と返事が来た。
ダンナさんは私がリツイートした頑張れ自衛隊の写真を、
プリントアウトして職場に貼っているそうで、
美也子さんの活動を心から応援してますと、
笑顔が透けて見えるような言葉で結ばれていた。

Oさんちにも、Tさんちにも、
居酒屋ミヤコは自粛しないから、
いつでも来てね!カンパイしようね!と目一杯不謹慎なメールした。
電話だったら泣いてるのばれちゃうから、
メールって便利だなと、思った。

幸いなことに、
家族を亡くすこともなく、出動命令を待つこともなく、
津波で家が流されてもいない私たちに出来ることは、
心を流されないということじゃないかな。
必要以上の安心や不安を買い占めたり、
それを誰かに押し付けたりしないでいたいなと思う。
言葉を発する前にほんのちょっと立ち止まって、
それが誰かを傷つけないか、悲しくさせないか、
自分のことばかり考えていないか、を考えたいなと思う。
だって、地震の前にはみんなそうやって、
ひとを思い、思いやり合って過ごして来たはず。
地震、津波、原発事故は多くを奪い、今も奪い続けようとしているけど、
心まで奪われてたまるもんか。

いま、不安でない人なんて、ひとりもいない。
でも、疑心暗鬼という二次災害に負けたくない。
こんな時だからこそ心を高く掲げ、歯を食いしばって、
なけなしの勇気をありったけはたいて踏み止まりたい。
心の値段を、下げてはいけない。
これから長く続く闘いのためにも。

あたしもこわい。気持ち、わかる。
だから、こわがらないで、って簡単に言えない。
でも人生はいつだって、
こわい、だけで生きて行けるほど簡単でもない。

元気出していこ。